- 築80年の納屋を耐震基準を満たしたコンパクトな暮らし空間にリフォームしました。
自給自足が目標。家の回りで農作業が楽しめます。
のどかな田園に建つN邸です。2011年9月、築80年の雑屋を住居として新しく建て直しました。雑屋とは、昔から養蚕や納屋として使っていた建物のことを言います。
「その雑屋をリフォームすることになったのは地震対策のため。古い主屋は倒壊が予測されるので、こちらに新しく耐震基準を満たした平屋を建てることにしました。リビングとキッチン、風呂などの水回り、寝室だけのコンパクトな暮らしです」と、ご主人。公務員として高知をはじめ、全国の空港で働いて来ました。定年を迎え、奥様とご実家で第二の人生を歩み始めたというわけです。
そのご主人の毎日は趣味の釣りや農作業などに忙しく、しかも、その手入れに準備にと実に楽しそう。「自給自足で、毎月何かが収穫できるようにしたいというのが主人の目標。朝昼晩、おやつの時以外はほとんど外にいますね」と、奥様。家のまわりに自家用の田畑があり、実のなる木をたくさん植えているのだそう。増改築の際、その木を伐るのではなく、避けて家を建てました。収穫した野菜や果実を漬けたり、ジャムにするのが奥様の役目です。
リフォームして暮らしが広がって、
身体を動かすことも多くなってきた。
新しく増改築した家は、椎間板ヘルニアを患っている奥様の負担を軽くするために、段差のないフラットなフローリングにし、ワンルーム感覚で暮らせる設計。お布団も寝室からデッキまでキャスター付きの布団干しで運べるように工夫しています。
「将来、車いすの生活になることも考えて玄関ドアを引き戸にしたり、台所も身障者用のものにしたのですけれど、空間が広がった分、ストレッチをしたり掃除をしたりと活動的になって身体を動かすことも多くなったようで、だんだん調子が良くなってきました。身障者用のキッチンは少し早過ぎたかな(笑)」と、奥様。家のまわりでいそいそとマメに働くご主人を室内から眺められるよう、窓を多く採っています。
「昔の家は南向きの明るい場所は客間で、日常の居住空間は北向きで暗くて寒かった。建て直してから南向きの部屋になって暖かいし、気持ちまで明るくなりましたね」と言います。
それにしても、ご主人のように一生の趣味のようなものがあると、これからの人生も心豊かに遊んで暮らせそう。「但し、遊ぶには体力が要りますから、定年になってから準備を始めても遅い。遊ぶなら早くから始めておいたほうがいい」そうです。
リビング
南側のリビングを中心に独立型のキッチンと寝室を眺めたところ。リビングと隣り合わせの寝室からは布団を干すにもウッドデッキまでキャスターで運べる便利さで、腰にも負担がかかりません。両方から洗面所、バスルームに行ける機能的なレイアウトです。
右側の主屋は、ご主人の趣味の部屋もあって、釣りの浮きを作ったりしているそうです。家の回りには実のなる木が植えられていて、お庭のほか、ニワトリ小屋や家庭菜園があります。
椎間板ヘルニアを患う奥様は、将来のことを考えて座って家事のできる身障者用のキッチンに。「キッチンを独立型にしたのは、主人が釣って来た魚をさばいたり、ジャムや燻製を作ったりと、台所を占領することが多いから」。二人並んで調理できます。